前半のあらすじ|国造り、恵比寿様
作品は全体で7分〜9分ほどで、賑やかな前半部分と、早間で華やかな後半部分からできています。
「七福神」と題名にありますが、歌詞に出てくるのは「恵比寿さま」だけです。作品前半では、この恵比寿の神様がどのように生まれたか、『古事記』などに書かれたことに取材しながら、唄われます。

『(鯰をおさえる恵比寿)』. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1307984 (参照 2025-03-13)
後半のあらすじ|引き物尽くし
作品後半部分は、「引き物尽くし」と呼ばれます。
恵比寿さまは、釣竿をつかい、萬(よろず)のものを、引き上げますが、竿で「引く」ということから、後半部分では「ひく」に関する事がらが、まるで今でいうラップのように、軽快にどんどん登場します。
琵琶や琴、胡弓や三味線などの楽器を「ひく」ことや、宝船を「ひく」こと、弓を「ひく」ことなどが、賑やかに描かれ、賑やかに作品は終わります。
日本舞踊の舞台では、そのおめでたい内容から、序幕に上演されることが多い作品です。

廣重 戯筆『七福神馬車の乗込』,いせ喜,明治3 [1870]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/9369520 (参照 2025-03-13)
七福神の歌詞、意味
(本調子)〽︎ 夫れ 伊弉諾伊弉冉夫婦寄り合ひ* 漫々たるわだつみに* 天の逆鉾下させ給ひ 引上げ給ふ其したたり* 凝りかたまって一つの島を*
ココまでの意味
【伊弉諾伊弉冉(イザナミイザナギ)夫婦寄り合ひ】いざなみ・いざなぎ夫婦が、寄り合い=相談し合い
【漫々たるわだつみに】もともと「綿津見」「海神」と書いて、「わだつみ」と読みましたが、「海」のことを意味します
【天の逆鉾下させ給ひ 引上げ給ふ其したたり】天の逆鉾を使って海水を掻き回し、その鉾を引き上げると、その剣先から、海水に含まれた塩が滴り落ち…
【凝りかたまって一つの島】塩が固まったことによって、一つの島、つまり日本という島国が完成した、という意味。『古事記』に取材した建国の伝説です。
月読*日読* 蛭子*素盞鳴*儲け給ふ 蛭子と申すは恵比寿のことよ 骨なし皮なし*やくたいなし* 三歳足立ち給はねば 手繰りくりくる来る船に* 乗せ奉れば蒼海原に 流したまへば* 海を譲りに受取り給ふ* 西の宮の恵比寿三郎* いともかしこき釣針おろし* 萬の魚を釣りつった*姿はいよ 扨しをらしや
ココまでの意味
【月読|つきよみ】イザナギが生み出した神で、夜を司る。
【日読|ひよみ】イザナギが生み出した神(天照大御神)。
【蛭子|ひるこ】イザナミ・イザナギの間に生まれた神様で、のちの恵比寿さま
【素戔嗚|すさのお】イザナギが生み出した神で、天照大御神の弟
※ココまで、神様の名前がいくつも読み込まれていますが、どれもイザナミ・イザナギに関わる神で、ココから蛭子=恵比寿さまの話になります。
【骨なし皮なし】恵比寿さまは生まれた当時、骨もなく、皮もないので、まるで蛭のようだっで...【やくたいなし】つまり、役立たずだった。それに【三歳足立ち給わねば】生まれたのち3歳になっても歩けなかった。なので...【手繰りくりくる来る船に】手で引いてきた、葦(あし)でできた船に乗せてしまい、(ヒドい話ですが)【蒼海原に流したまえば】、大海原に流してしまった。そのとき...【海を譲りに受取り給ふ】蛭子は、海を支配を譲り受けたのだが、実はそれが、【西の宮】兵庫県にある西宮神社に祀られている「恵比寿さま」のことなのです、の意味
そんな恵比寿さまが、【いともかしこき釣り針おろし】とても有難い釣り針を、海に投げ入れ、【萬の魚を釣りつった】どんな魚であっても釣り上げることができた、その姿は、実に【しをらしや】あどけない。
(二上り) 〽︎ 引けや引けひけ 引く物品々 様はきはずみ琵琶や琴 胡弓三味線 東雲横雲 そこひけ小車 子供達や御座れ 宝引しよ宝引しよと 帆綱引っかけ宝船曳いて来た 〽︎いざや若い衆 網引くまいか 沖の鴎がぱっと ぱっと立ったは三人張強弓 よっ引絞りにひやうふっと 射落とせばサ 浮きつ沈みつ 浪に揺られて 沖の方へ引くとの 水無月なかば祇園どのの祭で 山鉾飾って渡り拍子で曳いて来た 〽︎拍子揃へて 打つや太鼓の音のよさ 鳴るか鳴らぬか山田の鳴子 山田の鳴子 引けばからころ からりころり からりころり からころからころ からころや 轡ばみ揃へて神の神馬を 引連れひき連れ 勇みいさむや千代の御神楽 〽︎神は利生をつげの櫛 神は利生を黄楊の櫛 引注連縄の永き縁を
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